本稿は、『インタフェースデザインの心理学』の第14、18、19、20章を読んで、デザインについて考えたことをまとめたレポートです。UI/Webデザインやイラスト制作において、ユーザーの心理や行動特性を知ることはとても大切です。
今回読んだ章は、「画面上の文字をどう読むか」「人間の記憶の限界はどこか」という、デザインの基本を考える上での良いヒントになりました。気づいたポイントを以下に整理します。
本書の第14章では、「文章を読むこと」と「それを理解すること」は同じではないと述べられています。どれだけ文字が画面にきれいに並んでいても、長すぎる文章や難しい表現は、ユーザーが文字を目で追っているだけで、内容は頭に入っていきません。
また、第18章の理論によると、長い行に比べて短い行のほうが、ユーザーは心理的に「読みやすく、疲れにくい」と感じる傾向があります。 そのため、一文をシンプルにまとめ、適切な行幅で提示することで、ユーザーが直感的に意味を理解できる「読みやすさ(可読性)」を意識したデザインが大切であると分かりました。
本書の第19章および第20章では、人間の「ワーキングメモリ」は非常に脆弱であり、一度に記憶できる情報の数は、基本的には「4つ」までであると述べられています[2]。例えば、本の中では「日本の電話番号(090-XXXX-XXXX)」が3つのグループに分けられていることが、この理論の例として挙げられています。
これを読んで、中国の携帯電話番号も全く同じ仕組みだと気づきました。中国の番号は11桁ありますが、みんな自然に「3桁・4桁・4桁(180-XXXX-XXXX)」のように3つのグループに分けて覚えています。国が違っても、人間の記憶の限界に合わせて情報が整理されていることが分かります。
このように、人間の記憶の限界を考慮し、現代のUIやWebデザインでも、情報を4つ以下の塊(チャンク)にグループ化して整理することがとても重要です。私のサイト設計においても、「段階的開示(引き出しメニュー)」などを取り入れ、情報を一度にたくさん見せるのではなく、4つ以下にコントロールして画面をすっきりさせることで、ユーザーの認知負荷を抑えた見やすいデザインにつながると感じました。
本書の第27章では、人間の脳が一度に意識して処理できる情報量は非常に限られており、情報は少ないほどきちんと処理されると述べられています。
人が1秒間に処理できる400億もの情報のうち、脳が意識的に処理できるのはわずか40に過ぎません[3]。そのため、Webデザインでは一度に大量の情報を与えてユーザーを圧倒しない工夫が必要です。
これを解決するのが、必要な情報だけを少しずつ见せる「段階的開示」です[4]。たとえば、長いスクロールが必要なページを避け、最初に各トピックの要約を表示する設計が効果的です。また、「クリック数は少ないほうが良い」と言われがちですが、クリックするたびに欲しい情報がしっかり手に入るなら、ユーザーはストレスを感じず、進んでクリックを繰り返してくれます。[5]
私が開発するWebサイトでは、長いスクロールを減らし、情報を一度にたくさん見せないようにします 。その代わりに、タブや「折りたたみメニュー」を使って、ユーザーがそのときに必要な情報だけを少しずつ見せるようにします 。これにより、ユーザーが情報が多すぎて疲れてしまうのを防ぎます 。
この効果を確かめるために、下半期の実験では「NASA-TLX」という評価方法を使います 。ユーザーがどれくらい頭を使ったか(精神的要求)や、どれくらいイライラしたか(フラストレーション)を数値にして、本当に負担が減ったかを評価します 。
本書の第44章では、人間の脳がひとつのタスクに対して高い集中力を維持できる時間は、わずか10分程度であると述べられています。この時間を超えると注意力が低下するため、長時間のタスクでは10分ごとに「変化」や「区切り」を取り入れ、脳に新しい刺激を与えてリセットさせることが重要です。
初心者がイラスト学習(線画や着色など)を行う際、長時間の作業による集中力の途切れを防ぐため、サイト内の各学習ステップ(動画や図文解説の構成)を「7〜10分程度」で完結する小さなタスクに分割(タイム・チャンキング)して設計します。
この時間的なタスク分割の効果を検証するため、実験ではNASA-TLXの「時間的要求(Temporal Demand)」および「精神的要求(Mental Demand)」の指標を用います。タスクを10分以内に区切ることで、学習者が感じる時間的な焦りや精神的疲労(メンタルワークロード)が軽減されるかを定量的に評価します。
心理学の「目標勾配効果」に基づき、人間は目標に近づくほど、それを達成しようとするやる気が指数関数的に高まると述べられています。また、わずかでも「進捗している感覚」を視覚的に提示するだけで、タスクを最後までやり遂げる確率が上がります。
初心者向けのイラスト学習では途中で挫折しやすいため、サイトのUIに明確なプログレスバーやステップインジケータ(例:「全4ステップ中、現在第2ステップ」など)を実装します。これにより、学習者が「あとどれくらいで完成するか」を常に視覚的に把握できるようにします。
進捗の可視化がユーザーに与える影響を検証するため、NASA-TLXの「努力(Effort)」および「作業パフォーマンス(Performance)」の指標を用います。ゴールが明確に見えることで、学習者が最後まで作業を続けるための「努力」が維持され、作業後の達成感や自己評価(パフォーマンスへの満足度)が向上するかを測定します。[6]
これらの心理学の法則を意識して、これからの研究に活かしていきたいです。
[1]Weinschenk, S. (2021). 『インタフェースデザインの心理学 第2版 ―ウェブやアプリに新たな視点をもたらす100の指針』 (武舎広幸, 武舎るみ, 阿部和也 訳). オライリー・ジャパン.
[2]Cowan,Nelson. (2001). The magical number 4 in short-termmemory: A reconsideration of mental storage capacity. Behavioral and Brain Sciences 24:87--185
https://www.cambridge.org/core/services/aop-cambridge-core/content/view/44023F1147D4A1D44BDC0AD226838496/S0140525X01003922a.pdf/the-magical-number-4-in-short-term-memory-a-reconsideration-of-mental-storage-capacity.pdf
[3]Wilson, T. D. (2002). Strangers to Ourselves: Discovering the Adaptive Unconscious. Belknap Press of Harvard University Press.
[4]Nielsen, J. (2006, December 3). Progressive Disclosure. Nielsen Norman Group.
https://www.nngroup.com/articles/progressive-disclosure/
[5]Porter, J. (2003, April 15). Testing the Three-Click Rule. User Interface Engineering (UIE).
https://articles.centercentre.com/three_click_rule/
[6]Weinschenk, S. (2021). 100 Things Every Designer Needs to Know About People. New Riders.
Chapter 44: Sustained Attention Lasts About Ten Minutes.
Chapter 55: People Are Motivated by Progress, Mastery, and Control.