近年、ペット文化の発展とともに、犬や猫以外のペットを飼育する若者が増えている。特に日本と中国では、爬虫類・両生類・亀類などのエキゾチックアニマルが少しずつ注目されており、関連グッズ市場やオンラインコミュニティも拡大している。また、SNSの発展によって、このようなペット文化を知る人も増えている。
犬や猫と比べると、エキゾチックアニマルは飼育方法がより特殊である。例えば、種類によって必要な温度や湿度が異なり、環境管理が不十分だと健康に影響を与える可能性がある。また、犬や猫のように病気の状態が分かりやすくないため、飼育者が問題に気づきにくい。特に初心者にとっては、飼育知識を学び、長期間管理を続けることが難しい場合がある。
現在、市場には多くのペット管理Appが存在しているが、その多くは犬や猫向けであり、散歩記録や給餌リマインドなどの機能が中心となっている。一方で、エキゾチックアニマル向けのAppはまだ少なく、健康記録、環境モニタリング、コミュニティ機能などを総合的に持つサービスは少ない。また、UI/UXデザインの分野でも、エキゾチックアニマル飼育者のニーズに関する研究はまだ多くない。
さらに近年は、IoT技術やスマートデバイスの発展によって、温湿度センサーやカメラ機能をモバイルAppと連携できるようになってきた。これにより、エキゾチックアニマル管理に新しい可能性が生まれている。しかし、現在の製品はハードウェア中心のものが多く、UI設計やユーザー体験、情報の可視化については十分に研究されていない。
以上の背景から、本研究では爬虫類・両生類・亀類を対象として、UI/UXデザインの視点から、エキゾチックアニマル飼育者に適したAppデザインについて研究を行う。
本研究は、爬虫類・両生類・亀類などのエキゾチックアニマルを飼育するユーザーを対象とし、日常管理、健康モニタリング、ユーザー同士の交流などのニーズをもとに、エキゾチックアニマル向けモバイルAppのUI/UXデザインを提案することを目的とする。
また、初心者ユーザーでも理解しやすく、長期間使いやすい画面設計についても検討する。さらに、環境モニタリング装置との連携可能性についても研究を行う。
本研究では、以下の内容を行う。
第一に、アンケート調査とインタビューを通して、エキゾチックアニマル飼育者が日常の飼育で抱えている問題を整理する。例えば、環境管理の難しさ、病気の判断の難しさ、情報の分散、交流の場の不足などである。
第二に、既存のペット管理Appを分析し、UI設計、機能構造、ユーザー体験の特徴を整理する。また、それらがエキゾチックアニマルユーザーに適しているかを考察する。
第三に、調査結果をもとに、健康記録、温湿度モニタリング、異常通知、コミュニティ機能、病院検索などを含むUI構造を設計し、プロトタイプを制作する。
第四に、温湿度センサーや水槽型装置とモバイルUIを組み合わせ、環境データの可視化方法や、実体装置とデジタルUIの連携方法について検討する。
最後に、本研究を通して、エキゾチックアニマル分野に適したUI/UXデザインの方向性を整理し、今後の関連Appやスマートペット機器設計への参考となることを目指す。
本研究では、爬虫類・両生類・亀類などのエキゾチックアニマルを飼育している人、または今後飼育したいと考えている人を主な研究対象とする。対象地域は中国と日本を中心とし、年齢は16歳から40歳までを対象とした。
本調査では、20〜25歳の若年層ユーザーが最も多く、全体の約7割を占めていた。この年代はSNSやスマートフォンAppを日常的に利用している人が多く、ペット管理Appへの関心も高いと考えられる。
対象となるペットは、トカゲ類・ヘビ類・カメ類・両生類を中心とし、一部魚類も含めた。また、現在すでに飼育しているユーザーだけでなく、「今後飼ってみたい」と考えている初心者層も対象に含めた。
本研究では、特に以下の点に注目して分析を行う。
・飼育経験による管理方法の違い
・健康管理や環境管理に対する意識
・情報収集やコミュニティ利用の状況
・スマート機器や自動管理機能への関心
・初心者ユーザーが感じる不安や問題点
これらを通して、エキゾチックアニマル飼育者に適したUI/UXデザインの方向性を検討する。
本研究では、「ユーザー調査」「既存サービス分析」「UI/UX設計」「プロトタイプ制作」の4つを中心に研究を進める。
まず、ユーザー調査としてオンラインアンケートと半構造化インタビューを実施した。アンケートは中国と日本のユーザーを対象に行い、合計68件の回答を回収した。質問内容は、飼育経験、日常管理方法、困っていること、必要な機能などについてである。
また、アンケート後には8名のユーザーにオンラインインタビューを行い、実際の飼育中の悩みや、現在利用しているApp・SNSへの不満、理想的な管理機能について詳しく調査した。
次に、既存のペット管理Appや関連サービスを分析し、機能構造、情報整理方法、UIデザインの特徴などを比較する。特に、犬猫向けAppとエキゾチックアニマル向けサービスの違いについて確認し、本研究に活かす。
その後、調査結果をもとに、健康記録、温湿度管理、異常通知、コミュニティ機能、病院検索などを含むUI構造を設計する。さらに、Figmaなどを用いてUIプロトタイプを制作し、画面構成や操作性について検討する。
また、本研究ではAppだけではなく、水槽型装置との連携についても検討する。温湿度センサーやカメラ機能を想定し、環境データをどのようにUI上で表示するか、どのような通知方法が分かりやすいかについて研究を行う。
最後に、制作したプロトタイプに対して簡単なユーザーテストを行い、改善点を整理しながらUI/UXデザインの完成度を高めていく。
近年、日本ではペット飼育者のデジタルサービス利用が増加している。ペット業界の拡大に伴い、健康管理や飼育記録を支援するアプリも多く登場している。
一般社団法人ペットフード協会の調査によると*1、日本では2024年時点で犬と猫の飼育頭数が合計約1,590万頭に達しており、多くの家庭でペットが飼育されている。ペットは家族の一員として認識される傾向が強くなっており、健康管理や日常記録への関心も高まっている。
一方、中国でもペット市場は急速に成長している。『2025年中国ペット業界白書』によると*2、中国都市部のペット飼育者数は約7,689万人に達している。また、爬虫類などのエキゾチックアニマル飼育者も増加傾向にある。
しかし、既存のペット管理アプリに関する研究の多くは犬や猫を対象としており、エキゾチックアニマル向けの研究はまだ少ない。そのため、特殊な飼育環境を必要とするペットに適した管理システムについて検討する必要がある。
UI(User Interface)とUX(User Experience)は、デジタルサービス設計において重要な要素である。
UIは画面レイアウトや色彩、アイコンなど視覚的な要素を指し、UXはユーザーがサービスを利用する際に得られる体験全体を指す。
近年のUX研究では、単に機能を提供するだけではなく、情報を分かりやすく整理し、ユーザーが迷わず利用できる設計が重視されている。特にスマートフォンアプリでは、情報構造(Information Architecture)やユーザーフロー設計が重要であるとされている。
また、IoT機器と連携するサービスでは、センサー情報や環境データを分かりやすく可視化することが重要である。温度や湿度などのデータをリアルタイムで表示し、異常時には適切な通知を行うことで、ユーザーの負担を減らすことができる。
本研究では、これらのUI・UX理論を参考にしながら、エキゾチックアニマル飼育者に適した画面設計について検討する。
近年、エキゾチックアニマルへの関心は日本と中国の両国で高まっている。
中国のペット市場調査によると、2024年には爬虫類飼育者の割合が前年より増加しており、エキゾチックアニマル市場も拡大している。特に若年層を中心に、レオパードゲッコーやカメ、ヘビなどの飼育が人気を集めている。
また、中国の一部調査では、異寵(エキゾチックアニマル)飼育者数は約1,700万人規模とも報告されている。
日本でも爬虫類専門ショップや爬虫類イベントが増加しており、飼育人口は徐々に拡大している。しかし、犬や猫と比較すると、飼育方法や医療情報が十分に整備されているとは言えない。
さらに、本研究で実施したアンケート調査では、
という課題が多く挙げられた。
また、インタビュー調査でも、「ネット上の情報が多すぎて、何を信頼すればよいか分からない」という意見が複数見られた。
このことから、エキゾチックアニマル飼育者向けには、単なる情報提供だけでなく、健康管理・環境管理・コミュニティ機能を統合したサービスが求められていると考えられる。
本書では、UIは単なる画面デザインではなく、ユーザーとシステムをつなぐ接点であると説明されている。また、UXはサービスを利用する前から利用後までを含めた総合的な体験を指しており、UIとUXは密接に関係している。
本研究で制作するエキゾチックアニマル管理アプリにおいても、情報を表示するだけではなく、ユーザーが迷わず操作できることや、継続的に利用しやすい体験を提供することが重要であると考えられる。
実際に行ったユーザー調査では、「情報が分散している」「管理を継続しにくい」といった意見も見られた。そのため、本研究では機能面だけでなく、長期間利用しやすいUX設計についても検討する。
本書では、「デザインとは見た目ではなく設計である」と述べられている。
つまり、色や形を決めることだけではなく、情報をどのように整理し、ユーザーにどのような行動を促すかを考えることがデザインの本質である。
本研究では、健康管理、温湿度モニタリング、病院検索、コミュニティ機能など、多くの情報を扱う予定である。そのため、情報の優先順位や画面構成を整理し、分かりやすく伝えることが重要である。
今後は情報設計やナビゲーション設計についても検討を進めていく。
本書では、UIは利用環境によって大きく影響を受けると説明されている。
例えば、スマートフォンとPCでは操作方法が異なり、それに応じて適切な画面設計も変化する。また、利用する場所や時間帯によっても必要な情報は異なる。
本研究ではスマートフォンアプリを中心に設計を行う予定であるため、片手操作や視認性、情報の確認しやすさなどを考慮する必要がある。
さらに、将来的には水槽型装置やセンサーとの連携を想定し、実際の飼育環境とデジタルUIをつなぐ設計についても検討したい。
本書では、人間は色、形、動きなどの視覚情報から多くの情報を認識していると説明されている。
特にスマートフォンアプリでは、ユーザーが短時間で必要な情報を理解できるように設計することが重要である。
本研究で対象とするエキゾチックアニマル飼育者は、温度や湿度、給餌記録、健康状態など多くの情報を確認する必要がある。そのため、重要な情報を優先的に表示し、視覚的に理解しやすいデザインが求められる。
一般的に、異常状態は赤色、正常状態は緑色、注意状態は黄色で表示されることが多い。このような色による情報伝達を活用することで、ユーザーは状況を素早く判断できると考えられる。
また、アイコンやグラフを活用することで、数値情報だけでは分かりにくい環境データも直感的に理解しやすくなる。
そのため本研究では、人間の認知特性を考慮しながら、分かりやすい情報表示方法について検討する。
本書では、人間が一度に処理できる情報量には限界があることが説明されている。
情報量が多すぎる場合、ユーザーは必要な情報を見つけにくくなり、操作ミスや利用継続率の低下につながる可能性がある。
本研究で提案するアプリには、健康管理、温湿度管理、病院検索、コミュニティ機能、飼育図鑑など複数の機能が存在する。
そのため、すべての機能を同じ階層に配置するのではなく、利用頻度や重要度に応じて情報を整理する必要がある。
今後の設計では、ユーザーが迷わず目的の機能へ到達できるよう、ナビゲーション構造や情報設計について検討を行う。
本書では、ユーザーが目的の情報へ効率よく到達できるようにするためには、情報構造が重要であると述べられている。
本研究のユーザー調査では、「情報が分散している」「信頼できる情報が見つけにくい」という意見が多く見られた。
そのため本研究では、現時点で以下のような情報構造を想定している。
今後はワイヤーフレームを作成しながら、より適切な情報配置について検討する予定である。
本書では、ユーザーが現在どこにいるか、次にどこへ移動できるかを理解できるナビゲーション設計が重要であると説明されている。
本研究ではスマートフォンアプリを想定しているため、片手操作でも利用しやすいナビゲーション構造が必要である。
また、アンケート調査では20〜25歳の若年層ユーザーが全体の約7割を占めていた。一方で、飼育初心者も多く含まれていることから、複雑な操作を避け、できるだけ少ないステップで目的の画面へ移動できる設計を目指す。
今後はユーザーフローの作成を通して、各機能間の移動方法や操作手順について検討していく。
本書では、デザインは作り手の考えだけではなく、ユーザーの視点から設計することが重要であると説明されている。
本研究では、アンケート調査とインタビュー調査を通して、エキゾチックアニマル飼育者が抱える課題を整理した。
その結果、
などの課題が明らかになった。
そのため今後のUI設計では、機能を増やすことだけではなく、ユーザーが実際に感じている問題を解決できる設計を中心に進める必要があると考えられる。
本書では、ユーザーの操作に対して適切なフィードバックを返すことが重要であると説明されている。
例えば、
などを明確に表示することで、ユーザーは現在の状態を理解しやすくなる。
本研究においても、温湿度モニタリングや給餌記録機能では、ユーザーが安心して利用できるような通知方法や状態表示について検討する必要がある。
本書では、画面ごとのデザインルールを統一することが重要であると述べられている。
ボタン配置やアイコン、カラーなどが統一されていることで、ユーザーは操作方法を理解しやすくなり、学習コストを減らすことができる。
本研究では、初心者ユーザーも多く含まれているため、分かりやすく一貫性のあるUIデザインを目指す。
また、継続的な記録や健康管理を行うアプリであるため、長期間利用しやすい体験設計についても検討する。
本書を通して、UIデザインは単に画面を作ることではなく、ユーザーが情報をどのように理解し、どのように行動するかまで考える必要があることを学んだ。
また、ユーザー調査から得られた課題をもとに、情報の整理方法や機能配置を考えることの重要性を理解した。
そのため今後は、これまで行った調査結果と本書で学んだ内容を参考にしながら、情報構造やユーザーフローについて整理していきたい。
さらに、ワイヤーフレームの作成を通して、機能の配置や情報の見せ方を検討し、実際のUIデザインへ発展させていく予定である。