近年、日本ではペット飼育者のデジタルサービス利用が増加している。ペット業界の拡大に伴い、健康管理や飼育記録を支援するアプリも多く登場している。
一般社団法人ペットフード協会の調査によると*1、日本では2024年時点で犬と猫の飼育頭数が合計約1,590万頭に達しており、多くの家庭でペットが飼育されている。ペットは家族の一員として認識される傾向が強くなっており、健康管理や日常記録への関心も高まっている。
一方、中国でもペット市場は急速に成長している。『2025年中国ペット業界白書』によると*2、中国都市部のペット飼育者数は約7,689万人に達している。また、爬虫類などのエキゾチックアニマル飼育者も増加傾向にある。
しかし、既存のペット管理アプリに関する研究の多くは犬や猫を対象としており、エキゾチックアニマル向けの研究はまだ少ない。そのため、特殊な飼育環境を必要とするペットに適した管理システムについて検討する必要がある。
UI(User Interface)とUX(User Experience)は、デジタルサービス設計において重要な要素である。
UIは画面レイアウトや色彩、アイコンなど視覚的な要素を指し、UXはユーザーがサービスを利用する際に得られる体験全体を指す。
近年のUX研究では、単に機能を提供するだけではなく、情報を分かりやすく整理し、ユーザーが迷わず利用できる設計が重視されている。特にスマートフォンアプリでは、情報構造(Information Architecture)やユーザーフロー設計が重要であるとされている。
また、IoT機器と連携するサービスでは、センサー情報や環境データを分かりやすく可視化することが重要である。温度や湿度などのデータをリアルタイムで表示し、異常時には適切な通知を行うことで、ユーザーの負担を減らすことができる。
本研究では、これらのUI・UX理論を参考にしながら、エキゾチックアニマル飼育者に適した画面設計について検討する。
近年、エキゾチックアニマルへの関心は日本と中国の両国で高まっている。
中国のペット市場調査によると、2024年には爬虫類飼育者の割合が前年より増加しており、エキゾチックアニマル市場も拡大している。特に若年層を中心に、レオパードゲッコーやカメ、ヘビなどの飼育が人気を集めている。
また、中国の一部調査では、異寵(エキゾチックアニマル)飼育者数は約1,700万人規模とも報告されている。
日本でも爬虫類専門ショップや爬虫類イベントが増加しており、飼育人口は徐々に拡大している。しかし、犬や猫と比較すると、飼育方法や医療情報が十分に整備されているとは言えない。
さらに、本研究で実施したアンケート調査では、
という課題が多く挙げられた。
また、インタビュー調査でも、「ネット上の情報が多すぎて、何を信頼すればよいか分からない」という意見が複数見られた。
このことから、エキゾチックアニマル飼育者向けには、単なる情報提供だけでなく、健康管理・環境管理・コミュニティ機能を統合したサービスが求められていると考えられる。
本研究では、現在利用されているペット管理サービスおよびエキゾチックアニマル関連サービスについて比較分析を行った。
比較対象として、一般的なペット管理アプリである「PetDiary」、生物図鑑サービスである「ZUKAN」、エキゾチックアニマル取引プラットフォームである「MorphMarket」などを参考事例として調査した。
PetDiaryでは、給餌記録や健康管理などの基本的な管理機能が提供されている。しかし、主な対象は犬や猫であり、温度や湿度などエキゾチックアニマル特有の飼育環境管理には対応していない。*3
ZUKANでは、生物の種類や特徴を調べることができるが、健康記録や飼育管理機能は備わっていない。*4
MorphMarketでは、爬虫類を中心とした情報検索やコミュニティ機能が提供されているが、日常的な飼育管理や環境モニタリング機能は限定的である。*5
以上のサービスを比較した結果、既存サービスには以下のような特徴と課題が見られた。
| 機能 | PetDiary | ZUKAN | MorphMarket | 本研究 |
| 健康記録 | ○ | × | × | ○ |
| 温湿度管理 | × | × | × | ○ |
| 異常通知 | × | × | × | ○ |
| コミュニティ機能 | △ | × | ○ | ○ |
| 図鑑機能 | × | ○ | △ | ○ |
| 病院検索 | △ | × | × | ○ |
| IoT連携 | × | × | × | ○ |
| 家計簿機能 | ○ | × | × | ○ |
比較分析の結果、既存サービスはそれぞれ一部の機能に特化しているものの、エキゾチックアニマル飼育者に必要な健康管理、環境管理、情報提供、コミュニティ機能を統合的に提供するサービスは少ないことが分かった。
そのため、本研究ではこれらの課題を解決するためのUI/UX設計を検討する。